拝啓、上野千鶴子様  そしてご家族介護中の皆さまへ


そのとき、私が感じていたのは孤独でした 。

今年の夏休みは何もしませんでした。
ずっと実家の家事と母の世話をしていたからです。

用事はあれこれ済ませました。
暑い中我慢していた伸びた髪を切ったし
加圧トレーニングに行って、1時間あまり走ったし
前のWI-FIルーターの解約もしたし
銀行にも行きました。

夏休み中に済ませなければ、と
リマインダーにメモしていたタスクは
ほぼ終わりました。

大物の洗濯もしたし
毎日、母が生協で買いこんだ食材を減らすべく
色々料理もしたし、
いずれも両親は喜んで食べました。
普段はレトルトとか、冷凍食品とか
なんだかおいしくない半調理品を
食べていることが多いのです。

猛暑の中、体力を維持すべく
きちんとしたご飯を食べさせたかった。
だから目的は果たしました。

しかし。
私が手を動かさない限り、家のことは何も進みません。
休みも終わりかけたある夕方、
スーパーの買物の帰り、18時半頃でしたでしょうか。



今帰っても、何も夕飯の支度は出来ていないんだなあ
と思ったらなんだか途方にくれた気分になりました。

誰ともこの気持ちを共有できない。
誰も助けてくれない。

呼吸不全から復活して帰って来た母にも
病院通いから、人工呼吸器の切り替えまで
毎日まめに面倒見てくれる父にも
感謝しています。
何の不満もありません。
せめて自分が出来ることはやって
2人を楽にしたいと、そう思っています。

もっと過酷な介護をしている方はたくさんいるし
そうしたご家族と比較すれば、
意識もあって自分でトイレにも行ける母の介護は
そう重い負担ではないのも認識しています。


でも、孤独なのです。
誰も助けてくれない。
長女である自分ひとりにかかる負荷を理解したり
軽くしてくれる人がいない。

夕方の空を見ながら、
知り合い2人にメールしました。
何のことはない、近況メールです。
2人に、「元気ですか」と送信しました。

頑張っても何かが変わることはない、
いつかは1人になる。
自分のことを何もしていない。

そんな、諦めと、焦りと、虚しさと。
そうした感情が入り混じっての孤独感は
なんとも救いようがない、
そんな夏休みでした。

上野千鶴子が聞く  小笠原先生、ひとりで家で死ねますか?

上野千鶴子が聞く 小笠原先生、ひとりで家で死ねますか?