電車の中ではなにを読む?
事例1.
千代田線の中で「文学部唯野教授」を読みながらくつくつ笑う若い女性。
夕方ラッシュの小田急線内で立ちながら、ハードカバーの村上龍「トパーズ」を
カバーも掛けずに読みふける若いサラリーマン。
本棚と女房は人に見せるなと言いますが、
読んでいる本はその人の人格イメージを形成してしまうだけに、
電車の中で読む本として上記の例はやや危険な感じがします。
そういう私も地下鉄内で筒井康隆の百人一首のパロディーを読んで
下を向いて笑い続けたことがありました。
蝉丸のパロディーで、こんな句でした。
「これやこの 行くも帰るもこれやこの 行くも帰るも知るも知らぬも」
事例2.
ある日曜日の夜、実家から移動中の地下鉄内で
マイケル・サンデルの「これからの正義の話をしよう」を読んでいました。
途中のターミナル駅で大学生と思われる青年が乗ってきて
隣に座り、すぐに本を開いて読み始めました。
ちらっと覗くとなんと同じ「これからの正義〜」ではありませんか。
思わず、「これからの正義について話し合いましょう」と
言おうかと思ってしまいました。
しかし、既に半分以上読み進んでいるらしい彼の進捗に対し
こちらはまだ1/3程度。
議論にならなさそうなので止めておきました。
こういう本読んでいる若者って感じ良いですね。
事例3.
夢中になって読んでいて、目的の駅を降り損ねたことが
何度かあります。
渋谷に行く予定が大井町へ。
浦安で降りる予定が西船橋へ。
最近は危険なので、面白い小説の類は予定の駅の一つ前で閉じて
鞄にしまうことにしています。
しかし単純に結末が知りたくて読み進む推理小説とはまた違う、
自分の中に駆り立てるものがある小説は、なかなか頁を伏せるのが困難です。
何を考えているのかわからない(昔の)適齢期の娘、
高度経済成長期前夜の日本の基幹産業と銀行の力関係
主人公の青年がひたすら醸し出す死の匂い、など。
また逆方向に戻るのも大変なので、
やはり電車の中で読むのに一番適当なのは
ビジネス書か資格試験のテキストあたりでしょうか。
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