ジミー

実家の近所のたかださんの家ではいつも色々な動物を飼っていました。
リス、猫、ビーグルなどなど。
リスが逃亡して、うちのお風呂場に立てこもり騒動になったこともあります。

あるときは黒トラのオス猫が飼われていました。
名前をジミーと言い、体の大きな猫で、家と外を自由に行き来していました。
我が家では、まだ世話をするのが大変だからと猫がいなかったので
猫が好きな私は、うらやましくて仕方ありませんでした。

そんなある日、夕方帰宅した時この猫を家の前でみかけ声をかけたところ
尻尾をぶんぶん振りながら、近くにやってきました。
私はしゃがんで首のあたりをかいてやりました。
ところが気持ち良さそうにゴロゴロ言っていたジミーが、
突然私の手にかみつきました。
びっくりして離れ、家に入りましたが左手に2か所牙の跡がつき、
血が出ていました。

何か傷があるところでも触ってしまったのかもしれません。
家の猫ではないし、暗い中だったので、
何が起こったのか全然わかりませんでしたが。

しばらくして手の傷は治りましたがジミーを構うのはやめました。
その後ジミーは腎臓を悪くし、お医者さんに往診に来てもらうようになって
半年くらいして死んでしまいました。

もうこの猫が死んでしまってから30年位はたつと思うのですが
私の左手には今でもジミーが噛んだ跡が残っています。
そして酔っぱらって赤くなったりすると、この傷が白くくっきり浮き上がるのです。
ずいぶん前にいなくなった猫なのに、
よくこんなに鮮やかな記憶を残してくれたものだ、
と今でも手のひらを見るたびに思い出します。