子供の寝かた

姪が小さかった頃は、親子で頻繁に実家に遊びにきていました。
泊りがけの時は私の部屋に布団を敷いて寝ていました。
ここ数年は、母が具合が悪かったり、本人たちの塾だ、部活だ、試合だと、
お正月の集金以外めったに来なくなりましたが
本当に「来てうれしい、帰ってうれしい」というのが実感でした。

たぶん彼女が4、5歳くらいの時だったと思います。
良く寝入りばなに汗をかくのと、寝相が悪くて布団からはみ出すので
(こどもが眠っている間の動きが激しいのはどこも同じだと思いますが)
眠ってからもしばらく、私は本など読みながら様子を見ていました。

すると寝がえりを打った拍子に、不思議な姿勢をとるのです。
正座して上体をそのまま布団にうつぶせに倒した姿勢で眠っています。

アラーの神にお祈りしてるみたいな、いわゆる猫の「すまん寝」の体勢です。
すまん寝2011 - くるねこ大和

息が苦しくないのか、と思いました。
うつぶせ寝の子供みたいに窒息したら大変、と私は声をかけました。
「しょうちゃん、苦しくないの。仰向けで寝なよ」
体勢を変えさせるとしばらくは大の字で寝ました。

しかししばらくするとまた同じ、正座して上体を倒す姿勢に戻るのです。
どうやらこの姿勢で寝たいのだ、とわかりました。

「なんでこんな恰好で寝るんだろう」
その不思議な寝方を眺めながら考えました。
そのときはわかりませんでしたが、テレビで赤ちゃんの番組をみたときに
わかった気がしました。
赤ちゃんがお母さんのおなかにいるときの体勢なのです。

子供の脳は3歳くらいで劇的に変化しそれ以前の記憶を忘れる、と
以前、養老猛司氏の本で読みました。
しかし三島由紀夫は長じてからも、自分が生まれた時の記憶、
産湯に使っていた時の事-を覚えているとも言っています。

「まだこれくらいの年齢だと、お母さんの胎内にいた時の記憶が
無意識のどこかに残っているのかもしれないなあ」
と興味深く感じました。

そしてこの娘より3歳下の弟が、ある日全くおんなじ姿勢で
こたつで寝ていたのでした。

子供はほんとうに面白い。
自分が子供のときどんな風に感じ行動したか、再現して見せてくれる
精神史の記録のようです。

胎児の世界―人類の生命記憶 (中公新書 (691))

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