誰でも突然マネジャーになるわけではない -期待と経験のミスマッチ-

●女性社員への期待と経験のミスマッチ

会社の同期生が管理職としての評価が芳しくなく、他の部署に異動するという出来事が少し前にあった。
「いちプレイヤーとしては良いが、管理職としての実力なし」と判断されたという。

複雑な気持ちだった。
自分もいつ同じ評価を下されるかわからない。
明日は我が身だ。

そして本人がこうした事態をどう受け止めたのか。
一プレイヤーの方が自分に向いていると思ってホッとしたかもしれないし
これから成長軌道に乗せようとしていた部署を離れて残念だったかもしれない。
本人の性格からいって、たぶん前者のように思う。
だから一プレイヤーとしての思考のフレームワークを作り替えることも
しなかったのだろう。

しかし私が思ったのは
彼女を「マネジメントをする側の人間」として育てようとした上司が
今まで周囲にいたのかという疑問だ。

会社の戦略で、ある機能部門が注目される。
今までリスクを避けて地味に続けてきた仕事だ。
活用したいと言う会社の意図はわかるが、まだそこまでの実績はない。
そこへ突然、「人材育成」や「価値/難度の高い案件」や「品質維持と全国展開」
といった課題が持ち込まれる。

マネジメントする側とされる側では
明らかに仕事の観点も求められる成果も異なる。
両者の間には雨季のアマゾン川位の深くて広い川幅があるのだ。
そして反対側の川岸にわたるには、若いうちにある程度の訓練がないと厳しい。

具体的には、

  • 期毎の予算、戦略/施策/アクションプランの立案
  • 予実績の管理
  • QCDに基づいた大型案件のマネジメント(プロジェクトマネジメント)
  • クレーム処理
  • 意思決定プロセスの把握と訓練

将来管理職として育てようと思うなら、
こうした場面に触れておく機会設定を上司がするべきだと思う。
そして本人はその期待を察知し、自覚的に経営やマクロ経済の知識を仕入れるべく、努力する必要がある。

こうした予行演習を経ないでいきなり「今日から管理職」、
というのは会社にとっても本人にとっても不幸な結果になりやすい。

少子高齢化でどこの企業も女性社員を活用したいと考えているけれど
女性社員の絶対数が少ないし、その中でも顧客接点部署にいるのは一部だけだし
更にプロフィットセンターにはほとんど女性社員がいないのに、
上記のような訓練機会があるわけがない。
(当社比。主に製造業系の傾向と思われます。)

女性社員のほとんどがスタッフ/間接部門にいて、皆まじめだから
決まった業務範囲の中で正確性を期すような性質の仕事ばかりしているのだ。
期待と経験のミスマッチ、及び思考の固定化による不幸な結末。

●企業の幹部/人事/教育部門の皆さんへ

女性社員を管理職に登用し、会社の活力にしていきたいと考えるのであれば
見込みのありそうな女性社員を若いうちからプロフィットセンターに置いて、
会社の利益に直接貢献するような業務/部署の経験を積ませてください。

ある程度の年齢だからと言って
いきなりマネジメントのスキルや経験知が身についている訳じゃないんです。
自らお金を稼ぐ経験があって、初めてビジネスの本質を知るんです。

複数の事業分野を異動させて、人脈も作らせるべきです。
そうした経験や刺激もなく、管理職の実力無しっていうのもおかしな話です。
会社の利益に直結する仕事をさせてください。

●女性社員の皆さんへ

逆に管理職を志す気のある女性社員は、こうした経験知を積んでいくための
機会を得られるポジションにどんどん異動しましょう。
10年、20年と同じ部署、同じ業務に従事した後では遅いです。

逆説的な言い方ですが、自分を育てるのは自分です。
なんでも会社や上司のせいにはできません。
チャンスで自分を活かせなければ、それは自分に実力が無いからだと考えるのが正しいんです。
だから現実と格闘し、学習していかないと。

いまどき管理職になることを目標にする必要もないかもしれませんが
そこで獲得できる能力は自分に大きな影響を与えてくれるし
大きく成長する、またとないチャンスなのも事実です。

自分を育てましょう。