親が老いていく、ということ

ずいぶん前だが、遠藤周作氏のエッセイで
「親は自分と'死'の間を隔ててくれている壁である」
という文章を読んだことがある。

自分が死ぬことの現実感を遠ざけクッションとなってくれているのが親だ
という意味あいだ。

「おかんの昼ご飯」@山田ズーニー
自分の親が老いて弱っていくこととむきあう子供(といってもみな大人)の心情と
寄せられたメールの数々をつづった本だ。
読みながら何度も泣く。

癌とか痴呆症とか病気や何かの後遺症、といったことがなくても
老いによって心身が弱っていくのは衝撃だ。本人も家族も。

今まで出来ていたことができなくなる。
家事も、日常の判断や手配も徐々にできなくなる。

本を読んだり、DVDで映画をみたりする気力が無くなる。
みられるのはテレビ番組くらい。
別に面白くないところで笑う。

言葉が上手く出て来なくなる。
相手をいらいらさせるようなしゃべり方や
同じ話を何度も繰り返すようになる。

子供はだんだん色々なことが出来るようになっていくが
大人は老いるにつれ、今までやっていたことが出来なくなる。

親の次は自分がそうなるんだ。
自分もいずれそうなる。

今は怒ったり、けんかしたりしているけれど
親を亡くした時の絶望的な取り返しのつかなさと喪失感は
考えただけで怖い。

その時、諦めて、孤独と老いの恐怖を
受け入れることができるだろうか。

お正月、家族と無事過ごせただけで有難いことだと思う。
そのお正月もいつかは無くなってしまうのだから。