「猫の事務所」 −知識といじめー

猫の事務所 (日本の童話名作選)

猫の事務所 (日本の童話名作選)

主人公の「かまねこ」とは、盛夏に生まれた猫を総称しています。
夏に生まれた猫は寒がりなので、
冬眠るときは暖かいかまどの中でないと寝られません。
すすで体が汚れ真っ黒になってしまうので、
他の猫に「かまねこ」と呼ばれてさげすまれています。

そんな「かまねこ」の中でまじめで勉強熱心な1人(一匹?)が、
依頼者に代わって調べ物をする「猫の事務所」に雇われます。
雑用から下調べまで熱心に働き優秀な働き手となるのですが、
同僚の猫達には「かまねこ」というだけで馬鹿にされ続けます。

そんなことが続いたある日、同僚の猫達に決定的な意地悪をされ、
今まで我慢を重ねてきたかまねこはついに泣き出してしまいます。
そのとき、しくしく泣き続けるかまねこと同僚たちの前に
金色に輝く猫が現れ一喝します。
「お前達、そんな意地悪をするのなら、知識を持つことなど何の意味もない。」

ずいぶん前に読んだので詳細はやや不正確ですが
「猫の事務所」はこんなお話です。
吉本隆明の著書に引用されていて、それがきっかけで読みました。

短い話だし、子供向けのような童話仕立てで書かれていますが
ずいぶん深い内容だなあと感じたのを覚えています。

どんなに知識を収集したところで、
人に意地悪をするようであれば知識を得る意味は無い。
「知識とは想像力や共感力を高め、よりよい人間関係や人生をおくるためのもの」
そんな意味を感じます。

いじめによる自殺がずっとなくならない、
学校という場に共通するテーマとして、
姪っ子が成長したらこの話を読んであげようと楽しみにしていました。

そんなわけで彼女が小学校中学年になったある日、
実家に泊まりに来ていた夜にこの本を読んであげたのです。
自分と同じようにさぞ感動するかと期待しながら。
姪の反応は「???」

血縁関係があろうが、どんなに可愛がってなついていようが
大人と子供は別々の異なる人格なのだなあ、
と思い知った夜でした。

しかし。姪がどんなに反応しなかろうと、
「グスコードブリの伝記」「フランドン農学校の豚」とあわせ、
宮沢賢治の著作の中で大好きな作品の1つです。

宮沢賢治 (ちくま日本文学 3)

宮沢賢治 (ちくま日本文学 3)