「オタクの息子に悩んでます」@岡田斗司夫が面白い −「考える」方法のあれこれー

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)

「オタクの息子に悩んでます」がとにかく面白い。

朝日新聞の人生相談で岡田斗司夫が回答したものをまとめ、
どのように回答を導くのか、その考え方と試行錯誤の過程が書かれている。

●他の回答者と差別化する

とにかく「だれよりも面白く書きたい」
これが岡田氏が回答者となるにあたり設定した目標である。

人生相談の回答者は他に3人いて、
上野千鶴子車谷長吉金子勝(当時)といったそれぞれ強い個性の持ち主に対し
同じような回答をしても意味が無いと思ったことから
自分の独自性を出す意味で上記のような要件を設定した。

●岡田氏の思考ツールとは

相談者に対する強者の立場でただお利口さんな回答をしても意味はない。
氏の回答はとても分析的で具体的、納得のいくもので
読んでいて思わず膝を打ってしまうような内容だが、
そうした回答を考えるときの思考ツールとして以下が紹介されている。

  1. 「仕分ける」からみあった問題を個別課題に分け、考えるべきものとそうでないものに分ける。
  2. 「分析する」何が本当の問題なのか、相談分すら疑って考える。
  3. 「潜行する」なぜ、なぜ、なぜ、と疑いながら深く考えていく。
  4. 「アナロジー」似たような状況や気分を別のモデルから持ってきて表現する。
  5. 「メーター」1かゼロかという完全解決ではなく、50や70といった数量的な表現でイメージする。
  6. 「ピラミッド」全体の中の位置付けで考える。
  7. 「四分類」2×2で分類し、選択肢を提示する。
  8. 「思考フレームの拡大」領域を拡大して、考える範囲を強制的に拡げる。
  9. 「共感と立場」質問者と同じ痛み苦しみを共有したうえで答えること。

●「相手と同じ温度の風呂に入る」

「共感のコツは相談者と同じ温度の風呂に入ることにあります。」
と岡田氏は言う。
役に立とうとするあまり、一番論理的で行動可能で状況が改善される指針を
手早く言っても相談者にとっての解決にはならない。
「結論だけじゃダメなんです。それよりもっと前の段階で相手と同じ温度の風呂に入る、
これが必要です。」

●悩み全集

「彼のケータイを盗み見たら」
「再婚するなら、A、B、どっち」
「母が何も捨てられず困ります」
「45歳の息子が自立できず」
「子供がほしくありません」
「クラス替えでビミョーです」
「20歳の娘がダッコをせがみます」
「女優と結婚したいです」
「マンションを追い出されます」
「オタクの息子に悩んでます」

こうした相談に、どのように分析的かつ愛ある回答をしているか、
読むと思わず笑ってしまい、分析に感心し、最後深く共感する回答がどんなものか、
ぜひ本書を読んでみてほしい。

岡田斗司夫というひと

同じ著者の「レコーディングダイエット」を読んだときも
「これって問題解決のプロセスそのものだなあ」と思った。
しかも具体的かつ生活者の視点での思考。

氏が批判する、「頭が良いだけの回答」。
つい誰でもこれをやってしまうんじゃないか。
でも本当に頭を使った思考とは、こういうものなんじゃないかと思う。

↓こちらも大変面白く、かつ役に立つます。

生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント (文春新書 868)

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